半日陰・・・・・
これが一番物を美しく見せる基本的条件です
人間も、少し翳りの感じられる方が謎めいて魅力的だと言いませんか?
紙によっては「生成り:きなり」と言うのがあり、何故か気持ちが落ち着きます
少し色が黃味を帯びたもので、白く晒す前の製品
つまり自然の色なのです。
あるがまま・・・・・この言葉の響きも素敵でしょう?
「今日あって 明日炉に投げ込まれる花でさえ 神はこれほどに装ってくださる
栄耀栄華を誇ったソロモンでさえ これほどに装う事はなかった」
これは聖書の一節ですが、あるがままの大切さを言っているように思います。
自然は媚びることをしません、
だからこそ素直に心に入ってくるのだと思いませんか?
絵を描く時は光と影に心を配ります。
少し斜めに光を受けると、微妙な陰影が生まれます。
それが立体感を感じさせる部分です。
葉っぱ1枚でも、反り方や見え方で複雑な顔を見せます
指導していていつも思うことは「観ているようで上っ面」
なんとなく認識と言うパターン
それを深く認識することで、秘められた内面や持っている意思が理解できるのです。
それが、たった一枚の葉先にも生きてくるのです。
絵手紙用 道具あれこれ
墨・硯・紙・筆 この4つが様々な書き味に妙味を与えます。
高級だから良いという発想は全くといって良いほど役にはたちません。
書家などは「文房四宝」と呼んで、色々な組み合わせをします。
これを語るだけでも1冊の本になるほどですから、あまり深く考えないで、
まずは指導者の奨めるもので良いと思います。
私は、絵手紙にいくつかのこだわりがあり、使うものもほとんど決まっています。
これはそれぞれ作家の好みもありますが、
基本的には顔彩を用いる事が多いと思います。
顔彩も幾種類かありますが、私は吉祥の物をお奨めします。
色目に深みがあります。
金箱のほうが発色が深い。
顔彩(がんさい)
吉祥金箱35色
一般的な顔彩は、水干(すいひ)絵の具と言って、泥絵具を砕いた物を
水に溶かし、沈殿物を乾かしたものを、ニカワと澱粉で固めたものです。
近代では白土や胡粉に染料を加えて加工したものもある。
溶けやすく発色も良い利点がある。
欠点は色の深みに欠けるきらいがある。
したがって、表装などする時に
本格的な表装だと、しっかり水を打ちますが、
その時
色が水に溶け出して散ってしまうことがあります。
表具の上手下手は、簡単に見分けができます。
いくら高価な表具でも、表具師の腕は又別です。
上手な表具師が装幀した物は、いくら時間を経ても、常に真っすぐに下がります。
表具の左右が手前や後ろに反っているものは、決して上手だとはいえません。
幾重にも重ねて仕上げる表装は、水を打ってハケで叩き出します。
この時均一に叩かないと反りが出てしまうのです。
上手な表具師の仕事は、紙の中に沈んでいる色まで表に響かせます。
文字がふっくらを厚みを感じさせるのです。
上手な表具師だと、1枚の絵を4~5枚に剥ぎ分けます。
本物の絵が複製できるのです。
さすがに4枚目あたりは少々色が薄くなりますが、1枚の書画を剥がすのです。
実際剥がしたものを何度か目撃しましたが、比べれば分かる程度・・・・・
上手な表具師が表装したものは、それだけ紙の中に色や墨は食い込んでいるのです。
書家が「畳何枚貫いた」などと話してくれますが、
この奥深い部分までを、幾枚かに剥がすのです。
これは硬度なテクニックも必要ですが、良い紙でなければ難しいそうです。
理屈は判るのです、紙は幾層にも重ねられて1枚の紙になります。
その層を、一層づつ剥がすのですから全て本物です。
膠=ニカワ液
膠は一般には三千本(牛)や牛脂や兎脂、魚脂ですが、高級品は鹿膠です。
脂質も上等です。
目的を持って、場合によっては更に濃い目の膠液で溶かして使うほうが
良いことも知っておくと良いでしょう。
ただ、普通にハガキなどに絵手紙を描く時は問題になることはありません。
通常入手しやすい絵具は不透明水彩・透明水彩でしょう。
これは顔料をアラビアガム(膠着剤とかバインダーと呼ぶ)で、固めたもので、
アラビアガムの混入が多いほど透明感が増す。
それで、透明水彩と不透明水彩に区別される。
学童用のものは合成顔料であるために、退色が激しい。
日本画の用いる岩絵の具は鉱物を砕いて用いるもので、発色に独特の物がある
焼き群青などは東山魁夷が好んで用いた色。
筆
筆は日本製の毛は量が少なくあまり出回っていない、
毛だけは中国産北部や、ロシア(シベリア)産がよい。
毛にも、狼毫(ろうごう)=イタチや、狢=ムジナ(アナグマ)、タヌキに狼、
馬耳、羊、リス、猫、ウサギ、ヤギ、鹿、馬耳、豚、人毛などもあり、
それらを組み合わせ、混ぜることで特有の描き味を出すよう工夫されている。
毛は寒いほど良質なので、寒い地方の毛に良質なものが多い。
書道用の山馬筆(カモシカ、トナカイ)は中々面白い、荒々しく使うと妙味がある。
水墨画の作家は、岩肌などに用いる事が多い。
私が好む絵手紙用筆一押し
紅雲(中国産イタチ毛)京都、中里製
これは長年絵手紙で使ってみて、最も目的にかなった万能型の筆
ハガキを限定にしているので、サイズは大々で充分
この紅雲は命毛(先端部の中心になる毛)がよく集る様に工夫されている為
他の物より腰が強いので、穂先を整えなくても重ね描きが出来る。
ノドを使ったテクニックや腹の水の含み加減も充分で、描画技法に重宝する。
逆筆等の荒々しい使い方にも、腰が砕けることなくしっかりまとまリ、
初心者でも上手く描ける強い味方。
もう一つは、文字専用の小細筆キャムロン(東レ、帝人)
イタチやムジナ,白狸も良いのですが、水含みの奥深さはこのキャムロンには
劣ります。
コリンスキー(テン)やセーブル(シベリヤイタチ)は高級品で、
荒っぽい使い方には少し抵抗がある。だって高価だもん!
あくまで見栄を張るならこっちにしましょう!気分が違いますから。
それよりもナイロン特有の加工が程よいまとまりを見せ、
コリンスキーやセーブルよりも水持ちがよく、水の動きも素早くて面白い字に
化ける愉快な筆、形態の戻りは抜群、
欠点は腰位置がないこと
これは自然毛ではないので先細りがないために、均等な腰になる、
この癖を逆利用することで個性的な文字に仕上げる
紅雲(大々)
キャムロン(小)
紙
先ず最初に、通常のハガキやインクジェット用ハガキは駄目です。
通常のハガキは、平面的で表現力がほとんど出せません。
インクジェットは吸水性が早く、味も素っ気もない物になります。
紙は一定の厚さのものに、何キロの圧力をかけて形成したかで違いが出ます。
通常の印刷物が90キロ前後、アートスパイラルで156キロ
マーメイド 232キロ コットマン 235~350
アルシェ356~600キロ
紙厚が同じなら、プレスの大きいほうが強い(固い)したがって、吸水率が少ない。
アルシェが高価なのは全て手漉き作業で作られるからです。
その代わり、塗りこんだ色を完全に抜くこともでき、ケバも出ません。
これは私の絵手紙の描法が荒っぽく、筆にとってはいい迷惑な技法なので、
それに応えてくれるものでなければ技法固有の味わいが発揮出来ません。
絵手紙用の物は使いません、画仙紙なので粗め等の種類がない。
これも描法によるので、絵手紙用の紙を好む方も多いでしょう。
描きあがりを比較すれば一目瞭然、描きやすさの違うことが判ります。
あくまで目的や技法が異なるので、比較することは無意味でしょうが・・・・・
一般に絵手紙用として販売されている紙は,本画仙(中国)、和画仙(日本)
なので、たいていは販売金額でその品質(素材や製造工程)が判断出来ます
ただ、物によってはドーサ引き(にじみドメ加工)されていないものもあります、
こちらは書家がよく用いるものです。
購入する時は其のところを確認して求めることをお奨めします。
紙によっては、墨を入れたら一気にドンと吸い込んでしまうタイプ、
それが又味わいにもなるので好みで使い分けましょう
もし間違ってドーサが引かれていないものを求めても、表面にミョウバンを
薬局で手に入れて、水で薄めて濡れば、防水効果が出ます。
ミョウバン液を塗布したものをドーサ引きと呼んでいます。
塗布回数によって効果が違ってきます。
ドーサ液
あくまでも絵を描く描法や内容で選択します。
もう一つは、ドーサがしっかり引かれていて、にじみがほとんど不可能な物
こちらは、たらしこみ技法には向いている
たらしこみなどは技法の所で詳しく説明します
私が使う紙は、お薦めがコットマン ラフ(粗め)か、マーメード ラフ(粗め)
アルシェなら最高ですが、普通に使うには高価過ぎます。
コットマンやマーメードは廃番になったということですが、似たものはあります。
少しラフが弱くて紙厚も薄手ですが、アートスパイラル と言うのがあります、
普段使うには手頃です
コットマンは厚さも十分あり、水を多く与えても反らずに安定している。
よく使う技法のたらしこみなども、紙の吸い込みが遅いので充分時間が稼げる
針などを使う特殊な技法もほとんど毎回使うので、
紙の弾力性は仕上がりの大きな差となる
また、洗い出しなどという技法もよく使うので、
紙が薄かったり腰が弱いとすぐにめくれてしまい、全く使いものにならない。
これら絵手紙の技法による過酷な条件を満たしてくれるのが、先ほどのアルシェ、
そして次がコットマン、ミューズと言う順序
アートスパイラル中目 マーメイド ラフ
これをハガキ大に文房具用の裁断機(カッター)で切り分ける。
紙用裁断機
ヤフーオークション等だと1000円前後で手に入る
紙はF6サイズが一番効率が良い、1面でハガキサイズが8枚取れる
裁断後に残る切れ端は、試し描き用に使える程度の面が残る。
その他に必要なもの
水入れ
これは3つは欲しい、なんでも良い、私は透明なペットボトルを4個3分の1に
切って4個をまとめて幅広のセロテープで巻いて使っている。
安定感がよく、水の汚れがつきにくい、筆の水切りもよく切れる、どこにでもある、
古くなれば交換できる、まぁこんなところが良い点です。
一つは汚れた筆を雑洗い用、次に混色する時のチョイ点ける水、
色抜きなどをするためのきれいな水、と言うわけで、予備を入れで
4個あれば充分
よくあるプラスチックやビニール製のものは、汚れが付着しやすく、汚くなる。
たかが水入れですが、用途や効率を考えると、ペットボトルは中々のスグレ物
パレット
これは一番気を使う物の一つ
色を拡げたり混ぜたりする時に、色具合が確認できるもの、
つまり基本的には白色がベスト
材質は瀬戸物でも(皿)プラでもよい(プラは色染残りを起こす)
色を調合するので出来れば10センチ程度の面積がほしい所
私は100均で見つけた使い捨てのパレットを使っている(4枚1組)
理由は、たくさん色を混ぜ合わせるので、皿だと持ち運びにも不便をきたす
これだと、乾けば重ねて持ち運べるので床を取らない
混色した物が次にも使えて、おさいふエコ
欠点、軽いので安定感が少ない、もったいないと残してしまうために場所を取る
そのためには、色を暖色系と寒色系とか・・・・・区別して使う工夫も必要